2018-02-04

今度西荻でフェスをやるんだけどテーマ曲書けたりする?

「今度西荻でフェスをやるんだけどテーマ曲書けたりする?」

2015年も終わりに差し掛かった頃、神明通りの朝市でフェスの実行委員達が出すコーヒーをフウフウしながら飲んでいるとき、こんなお誘いをもらった。
寒い朝にあの少し酸味の効いたコーヒーが体にしみたことをよく覚えている。
西荻でフェスっていう発想はなかったなあと頭の片隅で思いながら、話を聞くと何とも楽しそうな、ワクワクするようなイベントになる気配がプンプンする。
僕は二つ返事で「いいよ」と伝えた。

7歳のときに引っ越してきて以来、西荻は地元だ。
小学生のときは西荻の塾に通っていたし、高校、大学と通学には西荻を使っていた。
でも正直なところ、小さい頃はあまり好きな街ではなかった。
渋い、おとなしい街だなあと思っていた。
土日は快速が止まらないし。

真の魅力に気づいたのは、お酒を飲めるようになってから。
美味しいお店、居酒屋がなんて多いこと、そしてどこもパンチが効いている。
僕の地元すごいじゃないの、西荻かなりやるじゃないの、と飲ん兵衛になった大人の僕は認識を改めた。
あのときは甘く見てすみませんでしたと、時折心の中で思いながら、居酒屋に入っていく、そんな日々をもう10年は過ごしている。

さて、そんな大好きな西荻でフェスが開催される、しかもかなり面白そう、ときたら西荻出身の作曲家としてテーマ曲を書いてみたくなるのは当然の気持ち。
オーケーの返事をしたあと、早速フェスの実行委員達に西荻のイメージを言葉にしてもらって、メールで送ってもらうことにした。
そのイメージをヒントに作曲をしようと考えたわけだ。

ところが、届いたメールを見てみると、このイメージが一人一人かなり違う、もう笑ってしまうくらい十人十色、バラバラ。
もう少し意見絞ってから送ってきてくれてもいいのに、と思ったほどに。
でも、そのバラバラ具合を眺めているうちに、これが西荻のよさなんだろうなあ、とじんわり思うようになった。
みんながそれぞれの思いを持って、この街で過ごしている、そのそれぞれの思いを柔らかく温かく受け止めてくれる西荻。
そりゃあ、一生懸命話しても絞れないよね、みんな西荻好きなんだもんね。

だから、テーマ曲は、この一人一人の思いを受け止めてくれる西荻と、西荻を好きなみんなの気持ちをモチーフに作曲するのが一番いいと思った。

曲はあっという間にできた。
曲がフェスの始まりに流れて、終わるときにまたこれを聴きながら来場者は西荻の駅までぶらぶら歩く、折角だからちょっとお店に入って、そうしていたらこの曲を演奏する人たちがお店に入ってきて、またみんなで楽しくなって。
そんな一日を空想したら、メロディとアレンジが自然と浮かんできた。

今年幸運なことに、このテーマ曲を生演奏する機会に恵まれた。
西荻のフェスで、西荻を思って書いたテーマ曲が響く。
それはもう最高に楽しく、美しい演奏にするっきゃない。
僕もいまからワクワクしている。

3月18日、西荻であいましょう。

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