2018-02-06

街の不動産屋さんが西荻窪に描く「なつかしい未来の街」—(株)日栄不動産【PR】

地方から東京に出てきた人なら一度は利用したことがある「街の不動産屋さん」。進学、就職、結婚、あるいは開業と、人生の節目や転機に必ず立ち寄る場所がここです。今回は利用者の観点からはなかなか知り得ない「街の不動産屋さん」のお仕事について日栄不動産の代表取締役・松本弘子さんにお話を伺いました。インタビュー場所は松本さんが不動産業を営む傍ら運営しているカフェ『in the Rough』。前編では松本さんのキャリアや不動産屋さんから見た西荻窪の魅力、不動産屋さんが果たす役割について、後編では『in the Rough』という場所について語っていただきました。

取材/文:小林真梨子
撮影:居平麻名


継がざるを得なかった家業。「こんなことして何になるのかな」と自問自答したあの頃。

—まず、松本さんのキャリアについてお話を伺いたいのですが、不動産屋さんをはじめられたきっかけは何だったのでしょうか。

 実は先代が平成元年から不動産屋をやっていて。私自身は長い間アメリカに住んでいたんですけど、帰国後——我が家は女の子が2人しかいなかったので、後継者の問題もあって——何となく仕事を手伝っていて6年くらい一緒にやったかな、で先代が亡くなったので代表をやるようになったというのが、ただのきっかけなんですけど(笑)。

—アメリカにはどのくらい行かれていたんですか?

 17歳の時から34歳まで、17年間行ってました。

—ではアメリカで勉強されてそのまま就職を?

 高校卒業後に一度帰国したんですが、(アメリカの)学校に行きたいと思ってもう一度行って、そのまま卒業し、結婚し、子どもが生まれてってしてるうちに長居してたっていう(笑)。永住権も取っていたんですよ。

—すごい…!では本当は向こうでずっと暮らすという選択肢もあったんですね。

 そうですね、あんまり帰ってくるつもりはなかったんですが、帰ってきたきっかけは(後継者問題ではなく)本当に自分の思いでした。うちは旦那さんも日本人で、まだ小さい子どもが2人いて、向こうでいうといわゆる「日系人」。私たち夫婦は日本で育っているので日本人のアイデンティティを持っていますが、子どもたちは見た目は日本人でもアイデンティティはどっちなのか、ある一定の年齢になると迷うなと。言葉(英語)が上手に喋れるようになるようにと思って向こうで育てたいと思っていたんですけど、アイデンティティを持っていないと、本人が言葉以上に苦しむんじゃないかと思って帰ってきたんです。

—どういう環境で子どもを育てていこうか、ということだったんですね。

 そうやって帰国して子どもを育てる中で、父に…先代に「子どもが小さいうちは大変かもしれないけど、仕事はしておいた方がいい」って言われたんですよ。実際子どもが小さくて大変だったんですけど、そう言われたので何となく続けていたんですが、先代が急に亡くなったのがきっかけで事業を継ぐことになったのがスタートだったんですね。色々なことがあり、子どももまだまだ手がかかる頃だったので「子育てだけしていたいな」と思った時も実はあったんですよ。自営というのは何でも自分でやらなければならないことも多くて大変だったし、要するに自分で志して入った道ではなかったので、仕事もわからないながらにやっていて「こんなことして何になるのかな?」って一瞬思ったんです(笑)。やらなきゃいけないにしても、食べるためだけの仕事なら別にこんなに忙しくなくてもいいし、9時に行って5時に帰ってくることもできるじゃないですか。子どもにしわ寄せが行くようなこともあって、そんな時にふと「私はこのまま仕事を続けて、子どもたちに何を残すんだろう」と思ったんですよね。うちも女の子2人なので、私がいくら頑張って会社を残したところで、娘たちも私と同じように「何で?こんなことやりたくない」ってなるんじゃないかと。じゃあ何を残すのかなって思った時に「そうだ、『働き方』を残そう」と思ったんですね。仕事とか会社とかを残すんじゃなくて、『働き方』を残せばいいんじゃないかと。だったら自分はやる意味があるのかなと思って。(子どもたちは)別に不動産屋継がなくてもいいし、継いでもいいし、でも、継いだ時にこんな働き方ならできるなっていう、そういうものを残したいなと思って作ったのがこの『in the Rough』だったんですけど(笑)それまでは「嫌だな」って思ってた時期もあったんです。


日栄不動産が運営するカフェ『in the Rough』。こちらの話は後編でたっぷりと。(画像提供:(株)日栄不動産)


広々とした店内。不動産の相談もこちらで行うことが多いそう。(画像提供:(株)日栄不動産)

 

不動産業界で作る新しい「働き方」

—会社のような形のあるものではなく、働き方というか生き方というか形のないソフトなものを…。

 そうですね。自営でよかったことは自由にできるところだったので、自由にできる働き方をしていけばいいのかなあって。今はまだないかもしれないけど、自分が仕事をはじめて最後おわるまでにそういう「働き方」を残したいなあと思ったんです。それで考えたのが、不動産のワークシェア。不動産の仕事は難しい仕事のようなんですけど、実は物件の写真を撮る技術だったり、物件のこと書く文章力だったり、たとえ不動産の知識がなくても、未経験の人でも不動産業界の仕事はできて、しかも自分の得意なことが大いに活かせるんです。子どもを育てながら仕事をしていく中で、例えば10年間——子どもが手がかからなくなるまでに、大体10〜15年くらいかかるんですけど——近くで時間の融通がきく範囲でパートに行くのも一つの選択肢なんですけど、そうじゃなくて、例えばお写真が好きであったら、ずっと物件の写真ばっかり10年間撮っていたらたぶんすごく上手くなる。

ーそうですね…!

 そうしたら(子育てが落ち着いて)10年後いざ働こうと思った時に、「私、建物内の写真だったらすごい得意です」って言える。ずっと物件のことだけ書いていたら、それこそR不動産みたいなすごいいい文章が書けるようになってる。それって別にフルタイムで働かなくてもいいし、不動産業界以外でも生かせるスキルだし、でもその10年間、子育てをしながらキャリアを積める。なんかそういうモデルケースをこの不動産業界の中で作れたらいいのかな

—実際、日栄不動産さんで働いている方も女性が多いんですか?

 特に限定したわけではないのですが、全員女性です。また、今一緒に仕事をしている方も、私以外はみんな、ここに来るまで不動産業はやったことがなくて、でもみんなそれぞれに得意なことがあって、それをちゃんと仕事に活かせています。仕事をはじめてから身につくスキルもあると思うんですけど、それ以前にみなさんもともと持っていたスキルや得意とするところが、すごく活かされているんじゃないかなと思います。


松本さんもおすすめの「食べておいしい薬膳茶」をかたわらに、取材は終始リラックスした雰囲気で進んだ。松の実やクコの実がたっぷり入っている。 

【NEXT:不動産屋さんは「街のコーディネーター」】

ページ: 1 2

関連記事